「おいおい嬢ちゃん、そんな格好でなにしてるんだ?」
「げへへ、いいことしようぜ」
じわりじわりと寄ってくる男たち。
「な、なによあんたたち! 逃げるわよころね!」
「こ、これは…盗賊って奴ッスか!? はじめて見たッス! いや、ナマ盗賊ですよナマ盗賊」
わいわいとよろこぶころねのその反応に、ガクッ、と、その場にいた誰もが肩透かしを食らった。
「ころね、あなたまだ武器がないわ。本当は街に召喚して、武器を渡すつもりだったんだけど…とにかく、今は逃げましょう!」
気を取り直して城壁の方を指差すエアだったが、肝心のころねは、盗賊に興味津々といった感じで、動く気配がない。
「あれッスよね、今私ピンチってやつッスよね」
「なんなんだこいつ、頭おかしいんじゃないか?」
ピンチと自覚しながら目を輝かせているころねに、たじろぐ男もいたが、リーダーと思われる体格のいい男が、一歩ころねに近づいて笑った。
「なに、頭がおかしかろうがなんだろうが、なかなかの上玉だ。遊ばせて貰おうぜ」
「ころね、早く!」
エアがころねの服を引っ張ると、さすがのころねも正気に戻って、逃げようとした。
「おっと、逃さねえぜ」
が、少し遅かった。
「あわわ」
手をひっぱられて、リーダーの男に抱き寄せられる。
「ころね!」
「おチビちゃんは後ろで黙って見てな」
どうすることもできないエアに、男たちは笑った。
「誰がおチビちゃんよ!」
叫んではみるが、エア自身には大した能力がないため、やはりどうすることもできない。
ちなみに妖精界ではどうだか知らないが、エアはどう見てもおチビちゃんである。
「エア、私のことは置いといて逃げるッスよ!」
「でも…!」
「ああ、一度言ってみたかったッスこのセリフ!」
「バカなの!」
こんな危機に陥ってもそんなことが言えるのかと、エアは頭を抱えた。
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