プロローグ(異世界官能小説家まんころね)





 ころねはネットで活動している、今人気の小説家だ。
 小説といっても、色々ある。
 彼女が書くのは官能小説ばかりで、しかもちょっと特殊なものが多かった。
 PNは「まんころね」。
 最初は趣味で書いていたが、広告収入だけで、意外にもすぐに食べていけるようになっていた。
 そうなるとやはりまともな仕事などやる気になれず、一日中引きこもって、小説を書いた。
「うーん、これは萌えるッスね~」
 キーボードを叩きながら、ころねはひとり呟く。
 深夜の暗い部屋。
 回転椅子の上で体育座りをして、ポテチを箸で食べ、ただひたすら液晶に写った文字の羅列をにらみつける。
 服はもちろん動きやすい部屋着――かと思いきや、おしゃれはしていた。
 おしゃれ、というよりは、コスプレに近い。
 誰に会うわけでもないのにそれをするのは、もちろん、オナニーするときシチュエーションに萌えるためである。
 もうすぐ二十歳になるが、背は飛び切り低く、中学生に間違えられるほどだ。
 髪は短かったり、長かったり、黒かったり、赤かったりする。
 ウィッグで日々違う自分を楽しむのだ。
「お、コメントげっとッス。なになに、『まんころねが異世界に行ったらやばそう』…?」
 パチンと、ころねは両手を叩いて、目を輝かせた。
「それはヤバそうッスね! 今日のおかずは決定ッス!」
 軽快に椅子からジャンプして、すぐそばのベッドへ寝転ぶ。
「どのおもちゃにするッスかね~」
 ベッド下の収納に、大量に隠している大人のおもちゃ達から、舌の形をしたバイブを取り出した。
「なにせファンタジーの世界ッスからねー。まずは獣にペロペロされるッスよ」
 ローションを付けて、付属のカップを舌がクリトリスにあたるように取り付ける。
「あっ…」
 バイブを動かすと、思わず小さな声が漏れた。
 これこれ、と、ころねはうっとりとした表情を浮かべて、体をよじらせる。
 ペロペロと、クリトリスを舐め回される感触を、獣に舐められていると想像してみると、それはもう、やばいほどに興奮した。
「あっ、ふぁっ…」
 右手で顔を覆い、絶頂を迎えようとした、その時だった。
 パーーーと、部屋が光った。
 正確に言うと、股間が光った。
「え、ひゃあ、あ、あ、ちょっとまってバイブ止め――」
 一体何が、という驚きと、遠慮なく続く舌の快感とで、頭の中は大混乱である。
 とりあえず、バイブを止め、M字に開いた股の間を、恐る恐る覗き込んだ。
「え、え、え…」
 そこには、ころねよりはるかに大混乱を起こしている小さな生き物がいた。
 手のひらに乗るくらい小さな女の子で、背中には羽が生えている。
「よ、妖精さんッスか!」
 興奮するころねとは裏腹に、その生き物はまだ意識がどこかへ行っていた。
 目の前で、股間になにか変なものを取り付けて、下半身丸出しでオナニーしている女がいたら、ショックを受けるのも仕方がない。
「はっ、いけないあたしったら!」
 突然正気に戻ったらしい彼女が、ふわりところねの顔の前に浮かび上がり、
「一体何をしてたのかはとりあえず置いておくわ。とにかく、時間がないの! 説明は後よ! 一緒にきて!」
 そう言って手を上げた。
 するとまたもや部屋が明るく光り、部屋中のものが宙を舞い出す。
「ちょ、これ、まさか流行りの異世界送りッスか、待って、ちょっと待つッス! せめて服着させ――」
 叫びながら服を取ろうとするが、それはまるで命でも宿ったかのように、ぐるぐると部屋を踊っていて、取れない。

 ――そして、部屋は空っぽになった。

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