12、準備はオーケー!(体で稼いだよ)

「さぁさぁ、行くわよ~!」
 いつになくテンションの高いエアが、楽しそうにくるくる回りながら、小さな丘を目指していく。
 それについていくころねは、大きなあくびをして、通常運転である。
「ねぇエア、やっぱりこれ置いていくッスよー」
 抜けない勇者の剣を振りまわすころね。
 腰には薬草をつめた鞄をつけて、準備は万全だった。
 もちろん、桃色宿屋で稼いだ金で買ったアイテムたちだ。
「なにを言ってるの! 勇者が勇者の剣を持たずして何で戦うの!」
「いやでも抜けないし、剣使ったことないし、重いし……ういしょ」
 重いと言っておきながら、剣を振り回して遊ぶころね。
 ――と、そのときだった。
「あ、わわ」
「ちょっ……!」
 ぐるぐるっと、勇者の剣は、ころねの手を離れて宙を舞った。
「ちょっと、なにしてんのよ! 勇者の剣よ!」
「いやあつい」
「ついじゃないわよ! ああ、どこまで飛んでくのよ……って、あ」
「あ」
 剣が飛んでいく先に目をやって、思わず二人は立ち止まった。
 そこにいたのは一匹のスライム。
 青いぷにぷにした物体が、なにごとかと振り返っているようである。
 だがすでに遅い。
 きれいな弧を描いて、そして、スライムめがけて剣は落ちていった。
 それはものすごい破裂音をたてて、飛び散る。

ブチッ

「ひ……」
「ひゃあ……」
 二人とも、思わず目を伏せた。
 恐る恐る目を開けると、そこには無残なスライムの――いや、スライムだった残骸があった。
 しばらく固まっていたが、やがてころねが口を開く。
「これは、もうミッションクリアなのでは。帰るッスよ」
「いえ、まだよ」
「まだ? スライムは倒したッスよ?」
 エアは静かに首を振って、周りの草影を指さした。
「今回の依頼は、スライム……の、群れ、よ」
 わさわさと、青いぷにぷに達が現れる。
 ずっとそこにいたようだが、どうも怯えて隠れていたらしい。
 しかし仲間の仇とでも言いたげに、それらは飛び跳ねて威嚇した。
「あわわ、大量ッス! エア! エア!」
「うっさいわね、なによ!」
 興奮するころねに、エアは鬱陶しそうに返事した。
「スライムは作品によって性別がないのと、あるのとがあるッスよ。この世界のスライムはどうなんッスかね!?」
「知るか! どうでもいいわ!」
「どうでもよくないッス! 確かめるッスよ!!」
「確かめるってどうやって――」
 エアの言葉は、びゅん、と、ものすごいスピードで走っていくころねが巻き起こした風にかき消された。
「え、ちょっ……」
 その速さに、言葉を失うエア。
 超高速で群れに向かってくる人間に、スライム達もひるむ。
 ――そして、地獄絵図は繰り返されるのだ。



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