【R18】男になって、叶う恋なんて!(5)

 教室に入ると、ざわっと騒めいたのが止まったのがわかった。
 明らかに、私の噂をしていたな。
 まぁ仕方ないか。昨日の私は変だった。
 それは私が一番わかっている。
 なんだって、あれは私じゃないのだから。
「ふぅ」
 席について、一息つく。
 今日は、私だ。
 どんな神がなんの目的でこんないたずらをしてきたのか知らないが、とりあえず戻ったのだ。
「おっはっよーー」
 ばーん、と、扉が勢いよく開く。
 奴だ。岡野だ。
 私はその男をキッと、思い切り睨みつけた。
「おーこわ」
 本当はそれだけにしようと思ったのだが、やはり気が済まない。
 立ち会がり、ドスドスと音を立てて岡野の前に立った。
「お、おぅ。戻ってよかったな」
「そうね、よかったわねぇ。昨日は私でお楽しみだったようだけどぉ?」
 今にも殴ってしまいそうになるのをどうにか堪えた。
 岡野は笑う。
「いや、よかったね! 女のオナニーってすげえな!」
「――――っ」
 こ…殺していいだろうか…いいんじゃないだろうか…。
 気を失ってしまいそうなくらい、頭がおかしくなった。
 だが、ここは教室。
 殴ってはいけない。殴ってはいけない。
 何度も何度もそう唱えて、どうにか怒りを抑えた。
「もう二度と私に近寄らないで」
「別に近寄ってねぇよ」
「うるさい!」
 もう一睨みして、私は席に戻った。
 遠目にクラスメイトが見守っていた。
 多分、話までは聞かれていないだろうが、誰が見ても、異様な光景というのはわかっただろう。

「ただいまー」
 明るい声で、家の玄関を開ける。
 家だ、我が家だ。
「おかえりなさい」
 いつもと変わらない、母の声。
「お母さん…」
 ああ、母だ。私の母だ。
「なに? どうかした?」
「ううん、なにも」
 いつもと変わらない日常に、感動で涙が出そうになる。
 のもつかの間。
「昨日はどうしちゃったの? なにかいやなことでもあった?」
「え! 私変だった?」
 岡野! なにをした!
「そりゃあ、もう、片付けるの大変だったのよ。人が変わったみたいだったわ」
 片付ける? なにを散らかした!?
 ああ、頭が痛い。
 これはしばらく後遺症が残りそうだ。
 ――なんて、そんなことすらも、甘い考えだったなんて、このときの私は知るよしもなかった。

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