1,面接(工場の慰め犬バイト)

「ああ、ここもだめだったかぁ」
 木葉は深い溜息をついた。
 高校はなんとか卒業したものの、その不器用さで仕事はすぐにクビになり、無事フリーターに。だがそれすらもうまくいかない始末である。
 もう幾度目かの就職活動中、彼女の目に止まったのは、『バイト募集中! 立っているだけでOK! 可愛い制服支給!』という求人チラシだった。
 それは薄暗い路地裏の電信柱に貼られた、いかにも怪しいものである。
「時給1500円…」
 ごくり、と、固唾を飲んだ。
 可愛い制服、立っているだけ、ということは、きっと呼び込みかなにかのバイトだろう。
 接客はことごとくだめだったが、選んでいる場合ではない。
 上京して一年。
 親にはクビになったことすら言っていない。
 貯金はもう底をついた。
「よ、よし…」
 幸い容姿は悪い方ではない。
 小柄で愛嬌のある顔付きをしている。
 学生時代もよくモテたし彼氏もできたが、中身がだめだった。その持ち前のドジっ子さは、どうやら周りを不幸にさせるらしく、3日とたたずに男も女も木葉から離れたものだ。
 木葉は覚悟を決め、今にも吹き飛びそうな紙切れに書かれた番号に電話をかけた。

 結果は、会って履歴書もまともに目を通されずに、即採用だった。
 職場は想像と全く違って、工場が立ち並ぶ場所で、その中でも一際大きな工場だった。
「あ、あの、こんなところでなんの呼び込みをするんですか?」
「呼び込み? ――ああ、いや、そんなもんじゃない。もっと簡単だから安心して」
 意味深な笑みを浮かべて、工場長は木葉を奥の部屋に案内した。
「ちょっと制服持ってくるから、お茶でも飲んで待ってて」
「あ、はい」
 なにもない、無意味に広い牢獄のような場所に一人にされ、何もすることもないので、言われた通り出されたお茶をすする。
「う、うーん…なんだか眠く…」
 言葉を言い終わる間もなく、木葉は眠りに落ちた。

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